プレスリリース

2023年 6月27日

株式会社 国際電気通信基礎技術研究所(ATR)
ロボットアバターやCGアバター 100体が施設を案内します!
アバター100実証実験『アバターまつり』
~アバターとの会話や操作体験を通じて未来の新しい働き方を体験できます~

ポイント
  • 株式会社国際電気通信基礎技術研究所が参画するムーンショット型研究開発事業(注1) 目標1「誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現」研究開発プロジェクト(略称:アバター共生社会プロジェクト、プロジェクトマネージャー:大阪大学基礎工学研究科 石黒 浩教授)では、アバター100実証実験(通称:アバターまつり)を、大阪・咲洲の複合商業施設であるアジア太平洋トレードセンター(ATC)で実施します。メディア向け発表会を7月10日(月)に実施し、一般公開は7月11日(火)〜7月20日(木)まで行います。
  • アバターまつりでは、サイバネティック・アバター(略称:CA、遠隔操作ができるロボットアバターやCGアバター)(注2)合計100体が、ATC内の様々な場所に配置され、ATCの施設、店舗、イベントなどを案内します。この案内は、新たに開発されたCA遠隔操作システムによって、1人が複数体のCAを遠隔操作して提供するものです。
  • ATCに来訪する一般市民の方は、CAを実際に遠隔操作して施設案内等を行う体験ができます。この実証実験では、CA100体を遠隔操作で動作させる技術的な実証を行うとともに、CAを利用して働く、暮らすという、アバター共生社会プロジェクトが目指す未来社会を一般市民の方々に疑似体験してもらい、意見を収集することで、アバター共生社会の社会的受容性の調査と研究開発へのフィードバックを狙います。

本実証実験は、以下の事業・プログラム・プロジェクト・主な研究開発課題・実証実験参画機関・連携機関および共催・後援・協力のもとで推進しています。

ムーンショット型研究開発事業(MS)
研究開発プログラム:「2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」
(プログラムディレクター:萩田紀博 大阪芸術大学芸術学部アートサイエンス学科 学科長・教授)
研究開発プロジェクト名:「誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現」
(プロジェクトマネージャー:石黒浩 大阪大学大学院基礎工学研究科 教授)
主な研究開発課題名:「企業連携実証実験基盤の開発・運営と企業コンソーシアム活動支援」
(課題推進者:宮下敬宏 国際電気通信基礎技術研究所 インタラクション技術バンク バンク長)
研究開発期間:令和2年12月~令和7年11月(予定)
実証実験参画機関:大阪大学、国際電気通信基礎技術研究所、京都大学、名古屋工業大学、理化学研究所、長崎大学、ソニーグループ株式会社
連携機関:株式会社サイバーエージェント
共催:咲洲プレ万博実行委員会
後援・協力:AVITA株式会社、一般社団法人 i-RooBO Network Forum

 研究開発プログラムでは、2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現するため、サイボーグやアバターとして知られる一連の技術を高度に活用し、人の身体的能力、認知能力及び知覚能力を拡張するサイバネティック・アバター技術を、社会通念を踏まえながら研究開発を推進していきます。
 研究開発プロジェクトでは、利用者の反応をみて行動するホスピタリティ豊かな対話行動ができる複数のCAを自在に遠隔操作して、現場に行かなくても多様な社会活動(仕事、教育、医療、日常等)に参画できることを実現します。2050年には、場所の選び方、時間の使い方、人間の能力の拡張において、生活様式が劇的に変革するが、社会とバランスのとれたアバター共生社会を実現します。
〈研究の背景と経緯〉
 少子高齢化が進展し労働力不足が懸念される中で、介護や育児をする必要がある人や高齢者など、さまざまな背景や価値観を持つ人々が、自らのライフスタイルに応じて多様な活動に参画できるようにすることが重要です。そのためには、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現することが鍵となります。内閣府が主導し、JSTが研究を推進するムーンショット型研究開発事業のうち、ムーンショット目標1「2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」の一環である「誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現」(アバター共生社会)研究開発プロジェクトでは、2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現するため、サイボーグやアバターとして知られる一連の技術を高度に活用し、人の身体的能力、認知能力および知覚能力を拡張するCA技術の研究開発を、社会通念を踏まえながら推進しています。
 アバター共生社会が実現されると、その社会では、遠隔操作可能で自分の体と同じように感覚を共有できる「身代わりロボット」であるCAによって、人間の活動範囲の制限がなくなります。仕事の場所は宇宙から人体の中まで多様化し、1人で10体以上のロボットを指揮者のように操作して、いつでも、どこからでも、大規模な業務を短時間でこなすこともできるようになります。このようなアバター共生社会を実現するために、2050年までに複数の人が遠隔操作する多数のCAで大規模かつ複雑なタスクを実行するための技術を、2030年までに1つのタスクに対して1人で10体以上のCAを操作できる技術を開発することを目標にして研究開発に取り組んでいます。このような技術は、1つのCAを複数の人で操作したり、人工知能を用いてCAを部分的に自律化したりすることで実現できるようになります。
 CAを用いることで時間、空間、身体の制約を超えた多様な社会活動(仕事、教育、医療、日常など)が可能になることで、人々のライフスタイルは少なからず変化します。このような変化を、一般の人々はどのように受け止めるでしょうか?私たちの研究グループでは、アバター共生社会を実現するための研究開発を進める一方で、社会的な受容性を把握し、研究開発に適宜フィードバックすることが重要だと考えています。ただし、アバター共生社会を言葉で説明したり、研究開発内容を紹介したりすることで、未来をイメージしてもらうことは困難です。そこで、実際の生活空間である商業施設において、条件を限定した上で、部分的・擬似的にアバター共生社会を実現し、一般の人々が、その社会に参加する体験を通じて、アバター共生社会がどうあるべきか、振り返って現在の社会はどうなっているのか、今どのような研究開発が必要なのか、などを考えてもらう実証実験を実施します。このように未来から出発して、現在の社会や研究開発などを考える計画手法のことをバックキャスティングと呼びます。アバター100実証実験(アバターまつり)では、一般市民が参加するバックキャスティング型実証実験を行い、アバター共生社会の在り方を一般市民の方々とともに考えます。
〈実証実験の内容〉
 ATCのITM棟2階および3階、O's棟2階の各所に配置された100体のCA(多種類のロボットアバターとCGアバター合計100体、参考資料「実験で使用する主なCA」参照のこと)が、施設・店舗・イベントなどの案内や、プロジェクトの紹介、接客、警備などを行います。これらのCAは、ITM棟2階および3階に設置された複数の遠隔操作室から、人が遠隔操作して動かします。実験期間中に、ATC以外の国内外の施設からの遠隔操作も試みます。遠隔操作を行う人は、ATCに来訪した一般の人と、本プロジェクトの参画機関がアルバイトで雇用した一般の人です。遠隔操作をした人、CAと対話をした人からは、アンケートやヒアリングによって意見を収集し、アバター共生社会の社会的受容性の調査と研究開発へのフィードバックを行います。
〈今後の展開〉
 本実証実験を含むバックキャスティング型実証実験をこれからも実施し、一般市民の方々に、CAによる新しい働き方や社会参加方法があること、アバター共生社会が実現されることで時間、空間、身体の制約を超えた多様な社会活動(仕事、教育、医療、日常など)が可能になることを知ってもらい、その結果として得られる率直な意見から、アバター共生社会の研究開発の進むべき方向を検討していきます。
〈参考資料〉

図2 アバター100実証実験『アバターまつり』配布チラシ
〈実験で使用する主なCA〉
設置型 アンドロイドERICA

担当参画機関:ATR、大阪大学、理化学研究所
人に近い外観を持ち、身振り・手振り・視線など様々な手段でコミュニケーションを行うことのできるロボットです。アバターまつりではERICAの遠隔操作を体験して頂けます。
対話型ロボット CommU

担当参画機関:大阪大学
机に乗るサイズの小型ロボットで、目の動き、口の動きによって多彩な感情表現が可能です。アバターまつりでは移動型ロボットTelecoが案内してきた来訪者との対話サービスを提供します。
小型ロボットSota
担当参画機関:大阪大学、京都大学
連携機関:株式会社サイバーエージェント
CommUと同じく机に乗るサイズの小型ロボットです。アバターまつりでは来訪者による操作体験を提供します。1人で10体のSotaを同時に操作する体験も可能です。
パペットロボット

担当参画機関:ATR、大阪大学
骨格ロボットにぬいぐるみ(パペット)を被せることで様々なキャラクタを表現可能な小型ロボットです。アバターまつりではパペットアバターたちの対話を披露します。
移動型 移動型ロボット Teleco

担当参画機関:ATR、大阪大学
人が歩く速度で障害物を避けながら静かに移動できる移動型ロボットです。対話相手に合わせて高さも調整可能です。アバターまつりでは来訪者と一緒に移動しながら館内を案内します。
対話型ロボット Robovie

担当参画機関:ATR、京都大学
人が活動する環境で自由に移動できるコミュニケーションロボットです。アバターまつりでは店舗で接客したり、警備員として働いたりします。
CG CGエージェント
 Gene(ジェネ)
 Uka(ウカ)

担当参画機関:ATR、名古屋工業大学
音声対話システム・遠隔アバター対話の双方で違和感なく利用でき、高い存在感と生命感を備えるCGエージェントです。アバターまつりでは、ATC内のいろんな場所にいて施設や店舗を案内します。来訪者による操作体験も可能です。
〈用語解説〉
注1)ムーンショット型研究開発事業
超高齢化社会や地球温暖化問題など重要な社会課題に対し、人々を魅了する野心的な目標(ムーンショット目標)を国が設定し、挑戦的な研究開発を推進する事業。ムーンショット目標1、2、3、6、8、9については科学技術振興機構(JST)が担当。大阪大学大学院基礎工学研究科の石黒浩教授がプロジェクトマネージャーとして推進しているプロジェクト「誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現」の一環として、ロボットやCGを含めた多様なアバターの様態を活用したサイバネティック・アバター(CA)基盤と CA 生活の実現を目指し、サイボーグやアバターとして知られる一連の技術を高度に活用して、人の身体的能力、認知能力および知覚能力を拡張する研究開発を推進しています。
注2)サイバネティック・アバター(Cybernetic Avatar(登録商標第6523764号)、略称:CA)
「身代わりとしてのロボットや映像等を示すアバターに加えて、人の身体的能力、認知能力及び知覚能力を拡張するICT 技術やロボット技術を含む概念」で、Society 5.0 時代のサイバー・フィジカル空間で自由自在に活躍するものを目指しています。CAは下図(JST資料より抜粋)のように、身体、脳、空間、時間の制約から解放するためにさまざまな機能や形態が考えられています。
〈資報道関係者の方へ・メディア向け発表会のご案内〉
開催日時・場所など、詳細はこちらからご確認ください(メディア向け発表会資料)
〈資料のダウンロード〉
ロボットの画像等の電子データおよびクレジットの情報については、以下のURLよりダウンロードして、ご利用ください。
https://avatar-ss-fes.iroobo.jp/
〈お問い合わせ先〉
株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)
経営統括部 企画・広報チーム
〒619-0288 京都府相楽郡精華町光台二丁目2番地2 TEL:0774-95-1176
FAX:0774-95-1178
Email:pratr.jp