プレスリリース

ブレイン・テック エビデンスブックを公開
~ブレイン・テックに関する科学的な根拠をまとめた消費者・事業者向けハンドブック~

2023年 7月 10日

株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)
株式会社アラヤ
慶應義塾大学

内閣府が主導するムーンショット型研究開発事業のムーンショット目標1の研究開発プロジェクトである「身体的能力と知覚能力の拡張による身体の制約からの解放」(プロジェクトマネージャー:金井良太、代表機関:株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)、以下、ムーンショット金井プロジェクト)では、このたび脳科学の知見とテクノロジーの融合を活用した技術であるブレイン・テック(ニューロテクノロジー)に関する科学的根拠をまとめた「ブレイン・テック エビデンスブック ver1.0」を公開しました。本エビデンスブックには、システマティックレビューという科学的手法に基づいて検証された、ブレイン・テックの有効性や安全性がまとめられています。また、ver1.0の公開に合わせて、本書を発展させるためのパブリックコメントを募集いたします。本書をご覧いただき、ぜひ皆さまからのご意見、ご感想、ご批判等をお寄せいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。
プロジェクトマネージャーのコメント
ムーンショット金井プロジェクトでは、「Building Trust in Braintech(ブレイン・テックに対する信頼構築)」を掲げ、一般の皆さまが安心してブレイン・テックを利用できる世界を創り出すことを大切に考えています。昨年度に公開したブレイン・テック ガイドブックver.1.0では、ブレイン・テックについての知識や、そのような技術との正しい向き合い方を紹介しました。
本エビデンスブックでは、実際のブレイン・テック製品においてしばしば標榜されている効果・効能を調査し、その科学的な根拠を具体的にまとめました。本書は、より効果的かつ安全にブレイン・テックをご利用いただくための資料として、また研究者や事業者が製品を開発したり、事業を展開したりする際にも役立つ内容となっています。ぜひ本書をお読みいただき、多くのご意見、ご感想、ご批判などをお寄せいただけますと幸いです。
また、ガイドブックと同様、今後エビデンスブックは英語版の公開を予定しています。本書の作成過程で行ったシステマティックレビューの結果を英文学術論文としてまとめ、出版するだけでなく、「Building Trust in Braintech」に必要な情報を日本から世界に向けて発信していくことも、ムーンショット金井プロジェクトの役割であると考えています。国際展開の一例として、プロジェクトマネージャーの金井は、2023年7月13日にUNESCO本部で開催されます「International Conference on the Ethics of Neurotechnology」に登壇いたします。今後ともムーンショット金井プロジェクトへのご支援をよろしくお願いいたします。
<背景>
脳科学の知見とテクノロジーの融合を活用した「ブレイン・テック(ニューロテクノロジー)」の市場規模は、今後、世界的に拡大することが見込まれています。特に、消費者が直接購入可能なDTC(Direct to Consumer)製品の市場は、欧米を中心に急拡大しています。それら製品のパンフレットを見てみると、「運動能力が向上する」「記憶力が良くなる」「感情を可視化する」といった、魅力的な謳い文句が並んでいます。しかし、本当にこのような効果が期待できるのでしょうか?一般消費者が自分でそうした製品を使うことに、危険性はないのでしょうか?
ムーンショット金井プロジェクトでは昨年度、これらの疑問に答えるため、ブレイン・テックに関して現状で明らかとなっている正しい知識や、そのような技術との向き合い方を示した「ガイドブック ver.1.0」を作成し、公表しました。そして、この度公開する「エビデンスブック ver.1.0」は、システマティックレビューの結果に基づいて、より具体的な有効性と安全性に関する根拠をまとめたものとなっています。なお、一部のシステマティックレビューは現在も行われており、その結果は調査が完了し次第、順次公開予定です。また、読者の皆さまからのご意見を反映して、エビデンスブックを増補・改訂するため、ver1.0の公開に合わせてパブリックコメントを募集いたします。本書をご覧いただき、ぜひ多くのご意見、ご感想、ご批判等を下記の入力フォームよりお寄せいただけましたら幸いです。
<ブレイン・テック エビデンスブック ver1.0の内容>
エビデンスブック ver1.0には、「ニューロフィードバックで運動能力は向上しますか?」「ニューロフィードバックで睡眠の質は向上しますか?」「ニューロフィードバックは注意力を高めますか?」「脳波はリラックス状態の指標になりますか?」といった、ブレイン・テック製品においてしばしば標榜されている効果・効能に対する調査結果が収録されています。この調査は、神経科学を背景に有する研究者・大学院生・大学生からなるチームが、システマティックレビューという科学的手法を用いて行いました。さらにエビデンスブックには、基礎知識を解説した付録も収録されています。これは、ガイドブックver.1の内容では不十分と考えられる、エビデンスブックを読み進める上で必要な情報を提供するものです。なお、医療を目的としたブレイン・テック製品については、本書では対象外となっておりますのでご注意ください。
<パブリックコメントの受付>
パブリックコメントは以下のURLにて受け付けております。ご記入をお願いいたします。
https://forms.gle/6Z9QMzQ27zPFTx7V7
ブレイン・テック エビデンスブックはこちらより閲覧できます。
<パブリックコメントの募集期間>
2023年7月10日(月)から同年8月6日(日)
※日本時間8月6日(日)23時59分まで受け付けます。
<ブレイン・テック エビデンスブックの作成メンバー>
■エビデンス評価委員会
武見 充晃(慶應義塾大学大学院 理工学研究科 特任講師/評価委員会委員長)
天野 薫(東京大学大学院 情報理工学系研究科 教授)
井原 綾(情報通信研究機構 脳情報通信融合研究センター 主任研究員)
大須 理英子(早稲田大学 人間科学学術院 教授)
河原 純一郎(北海道大学大学院 文学研究院 教授)
岸 哲史(東京大学大学院 医学系研究科 特任講師)
玉置 應子(理化学研究所 脳神経科学研究センター 理研白眉研究チームリーダー)
羽倉 信宏(情報通信研究機構 脳情報通信融合研究センター 主任研究員)
細見 晃一(大阪大学大学院 医学系研究科 脳神経外科学 特任講師)
町澤 まろ(広島大学 脳・こころ・感性科学研究センター 特任准教授)
栁澤 琢史(大阪大学 高等共創研究院 教授)
吉村 奈津江(東京工業大学 情報理工学院 教授)
■システマティックレビューチーム
女川 亮司(早稲田大学 理工学術院 日本学術振興会特別研究員PD/チームリーダー)
Isabel Bandes(東京工業大学 工学院 情報通信系 博士課程)
岩間 清太朗(慶應義塾大学 理工学部 生命情報学科 助教)
金子 直嗣(東京大学大学院 総合文化研究科 助教)
木村 一皓(理化学研究所 生命機能科学研究センター 基礎科学特別研究員)
許 鈺婷(東京大学大学院 情報理工学系研究科 博士後期課程)
倉敷 秀明(慶應義塾大学大学院 理工学研究科 修士課程)(2023年3月修了)
佐々木 睦(大阪大学大学院 基礎工学研究科 日本学術振興会特別研究員PD)
杉本 海里(早稲田大学理工学術院 基幹理工学研究科 博士後期課程)
竹内 皓紀(東京大学大学院 教育学研究科 特任研究員)
野山 大樹(東京大学大学院 工学系研究科 博士後期課程)
村岡 慶人(慶應義塾大学大学院 理工学研究科 修士課程)(2022年3月修了)
※ 一部のチームメンバーは未開示です。担当RQ の調査結果公表に合わせて順次公開されます。
■ブレイン・テック エビデンスブック作成に関連する研究開発課題
課題4-1-1「プロジェクト共通課題の検討と社会実装に向けた研究開発」(課題推進者:金井 良太)
課題4-1-2「Trusted BMIを実現する社会基盤整備」(課題推進者:武見 充晃)
■ムーンショット型研究開発事業について
内閣府が主導する「ムーンショット型研究開発制度」は、超高齢化社会や地球温暖化問題など重要な社会課題に対し、人々を魅了する野心的な目標(ムーンショット目標)を国が設定し、挑戦的な研究開発を推進するものです。
国立研究開発法人科学技術振興機構の本プロジェクトに関する情報はこちら
■研究開発プロジェクト「身体的能力と知覚能力の拡張による身体の制約からの解放」の概要
人の意図が推定できれば、思い通りに操作できる究極のサイバネティック・アバター(CA)注1)が可能になります。推定には脳活動の内部だけでなく脳表面情報や他人とのインタラクション情報も重要な手がかりになります。これらをAI技術で統合し、ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)注2)機能を持つCA(BMI-CA)を倫理的課題に考慮して開発します。2050年には、人の思い通りに操作できる究極のBMI-CAを実現します。
本プロジェクトのウェブサイトはこちら
<用語解説>
注1)サイバネティック・アバター(Cybernetic Avatar:登録商標第6523764号)
遠隔操作できるロボットやサイバー空間上でのキャラクターのように、自分と感覚を共有し社会活動を行うアバターのことを指します。
注2)ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)
脳情報を利用することで、脳(ブレイン)と機械(マシン)を直接つなぐ技術(インターフェース)の総称です。
<本件に関するお問い合わせ先>
■報道全般に関するお問い合わせ
株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)
経営統括部 企画・広報チーム
TEL:0774-95-1176
FAX:0774-95-1178
Email:pratr.jp

■研究開発プロジェクト全般に関するお問い合わせ
金井 良太
株式会社アラヤ 代表取締役
E-mail:pmobrains.link